全力で振り切れ!
イノベーションを生み出す企業には共通点がある。大きなリスクをいとわず、果敢に攻め続ける点だ。何度も打席に立ち、全力で振り切ることが、未来を開く。
スウェーデン南部に位置するヘルシンボリ。ここに世界中から見学者が訪れるミュージアムがある。
展示されているのは絵画でも彫刻でもない。
企業が発売してきた失敗商品の数々だ。
その名も「Museum of Failure(失敗ミュージアム)」。
歯磨き粉ブランドが作った冷凍ラザニア、履きづらそうなプラスチック製ビジネスシューズ、ポケットに入らないくらい大きな携帯型音楽プレーヤー……。
開発者の常識を疑うような失敗の「逸品」ばかりが約800点、所狭しと陳列されている。
知名度が低い商品だけに限らない。米グーグルが開発した眼鏡型端末「グーグルグラス」や、
かつて米ツイッターが開発したツイッター専用端末なども存在感を放つ。
任天堂やソニーといった日本企業の製品も並べられていた。
「日本の企業は1980~90年代はイノベーティブだったが、今はそうではない。魔法を失ってしまった」
なぜか。一つは、多くの企業の規模が拡大したことでいつしか生まれた「守りの姿勢」にある。「日本人は守るのが好き。サッカーの試合でもそうだ。守って、守って、1対0で勝とうとする」常にゴールを目指す攻めの姿勢で、何度もシュートしなければ、得点は生まれない。それはイノベーションでも同じはずだという。多くの経営者は、頭では「リスクを取らなければイノベーションは生まれない」と分かっている。
だからこそ、年初のあいさつや社内向けメールなどで「リスクを取れ。チャレンジしろ」と言って、
社員たちを鼓舞する。
だが同時に失敗も恐れる。失敗すれば世間の冷たい目にさらされるばかりか、大切な顧客の信頼を失う。社員も経営者が守りに入っていることに気づけば、あえて挑戦しようとは思わない。
日本で時価総額トップのトヨタ自動車も例外ではない。同社が10月4日にソフトバンクと共同で新会社を設立すると発表した理由もここにある。コネクテッドやシェアリングといった新技術を使い、次代のモビリティーサービスをここから生み出す。
良い失敗をいかに速く積み上げるか。これができなければ、トヨタとて将来はない。
1958年4月、長嶋茂雄はプロ初のバッターボックスに立ち、何度も全力でバットを振り切った。
結果は4連続三振。それでも「次はヒットを打つ」と明るかった。恐れず何度も、バットを振り切る。
そこから未来は開ける。
失敗の反対は成功 ではなく、
”何もしないこと”
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